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中小企業におけるDXの現状2024

作成者: sauce|2024年9月20日

こんにちは。sauceです。

私事ですが2022年夏頃から産休・育休をいただいており、今回約2年ぶりのブログとなります。

……2年!!!改めて文字にして驚いています。月日の流れる速さは恐ろしいですね。

これから必死にキャッチアップしていきますので、改めてよろしくお願いいたします!

 

さて、前置きが長くなりましたが、今回は中小企業におけるDXの現状についてです。

と言いましてもテーマが壮大すぎるので、日本のDX普及のきっかけを作った経済産業省における現状認識から整理してみたいと思います。

経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」

 

DXとは何か

まずは定義から確認していきます。

DXという言葉自体はスウェーデンの大学教授によって提唱されたものですが、経済産業省は以下のように説明しています。

DXとは、売上・利益の増加、新しいビジネスの立ち上げなど、デジタルを活用して企業や組織の変革を通じた成長を目指すもの。

こちらのブログでも過去に取り上げていますが、DXの取組には段階があり、ペーパーレス=DXという訳でもありません。具体的には下記の4段階のフェーズに分けられています。

引用:DX支援ガイダンス - デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ - 概要版

経済産業省は中堅・中小企業等のDX推進を目的としつつも、それ以前の段階(デジタイゼーションおよびデジタライゼーション)を「デジタル化」と位置付け、DXに進むための重要なステップとして取り上げています。

デジタル化は必須ではあっても途中経過に過ぎず、その先のDXの実現=ビジネスモデルの変革や競争力強化等を最終的なゴールに設定する必要があるのです。

とは言え、千里の道も一歩から、スモールステップで身近なものからデジタル化を進めていくのがDX推進のセオリーと言われています。

 

中堅・中小企業等のDXに対する理解度と期待する効果

次に、そもそも現在DXがどの程度社会に浸透しているのか、中小企業等がどのようにDXを認識しているのか確認してみます。

引用:DX支援ガイダンス - デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ - 概要版

・DXについて「理解している」、「ある程度理解している」と回答した企業は約半数にとどまる

・DXを業務効率化やコスト削減にとどまる動きであると考えている企業も相当数存在している

DXを「(ある程度)理解している」と考えている企業においても、その相当数がデジタル化とDXを同じものとして考えていることが分かります。

定義にこだわりすぎる必要は無いと思いますが、DXの正しい理解が広まっているかという観点では現在も道半ばという事になりそうです。

 

中堅・中小企業等のDXの取組状況と課題

次に、DXの取組状況を確認します。経済産業省による「DXレポート」公表から今年で6年、現在DXにより何が実現できていて、何に困っているのでしょうか。

 

引用:DX支援ガイダンス - デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ - 概要版

・段階12の企業が全体の66%程度を占め、中堅・中小企業等のデジタル化は道半ばである

・人材、情報、資金の不足に課題を感じている企業が多数を占める

2割の中小企業等がいまだに未着手であり、「DX推進に関わる人材が少ない」「予算の確保が難しい」「具体的な効果や成果が見えない」「何から始めてよいかわからない」と考える企業が多いようです。

ただし、「資金の不足」に関してだけは、現在は費用負担が少なく簡単に利用できるデジタルツールも多数登場しており、これらを積極的に活用していくことが重要だとも述べられていました。

Saas等のクラウドツールを例に挙げてみても、現在は無料プランや無料トライアル期間が用意されているものが数多く存在します。中小企業の規模感だからこそ無料プランの範囲内で利用できているという事例もありますので、そうしたメリットを逃していると考えると確かにもったいなく感じられます。

 

DX推進政策における新たな展開

ここまで中小企業におけるDXの現状を表すデータを確認してきましたが、経済産業省のDX推進政策に対する見解にも触れてみます。

 政府としてもこうした現状を踏まえ、様々な企業DX推進政策に取り組んできており、中堅・中小企業等に対しても、各種補助金や税制による金銭的支援、認定や表彰制度の活用を通じた促進策等の「個社支援」に取り組んできている。
 しかし、大企業であれば豊富な経営資源を活用してDXに取り組むことができる一方、中堅・中小企業等においては特に人材・情報・資金が不足しており、独力でDXを推進することは難しい。
 そのため、従来の「個社支援」政策に加えて、いわば中堅・中小企業等の伴走役たる支援機関(「企業のDXを支援する組織・個人」を指す。)を通じて中堅・中小企業等のDXを支援する「新しいアプローチ」による政策展開が有効と考えられる。実際、こうした取組が全国各地で起きつつある。

引用:DX支援ガイダンス - デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ

人材・情報・資金が不足しがちな中堅・中小企業等が独力でDXを推進するのではなく伴走役となる支援機関を活用しながらDXを推進していきましょう、というお話ですね。

支援機関の具体例と現在の活用状況については以下のように示されています。

中小企業のDXにおける支援機関の活用状況

引用:DX支援ガイダンス - デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ

・DXに積極的な中小企業に対するアンケート調査において、既に活用している企業を含め約半数の中小企業が支援機関の活用を検討している。

DX自体は一過性ではない持続的な経営変革の活動であり、支援対象企業の活動を日常的に把握し伴走支援を続ける上で、デジタル技術やインターネットが普及した今日においても、「近接性」は重要な要素であり、地域の支援機関の強みである。

・(支援機関の役割を)例えて言うならば、中堅・中小企業等と普段から日常的に対話を重ね、企業の一番近くで支援し、成長を見守り続ける中堅・中小企業等の「主治医」にあたる存在である。

ネットでどことでも繋がれる現在において、ここでは「地域の」支援機関が注目されています。

その意図としては、デジタル化の先にあるDXの実現に至るまでの長いスパンで伴走できること、またDX支援と企業成長による利益の還元により地域経済が持続的に発展するという好循環が生まれることを期待されているようです。

 

おわりに

今回調べている中でなるほど…と印象に残った文章がありましたので、最後にそちらもご紹介させていただきます。

 デジタル化とかDXと聞くと、苦手意識を持つ人は少なくありません。中には嫌悪感を抱く方さえいるかもしれません。

 過去にも同じようなことがありました。機械化やOA(オフィスオートメーション)化、IT化です。FAXや複合機、パソコンなどにより、手書きや紙で行っていた業務が機械化されました。駅の自動改札、銀行のATMや店舗のPOSレジも同じです。当時、仕事が奪われる、目に見える紙の方が便利、パソコンは操作が難しい、といった不安の声がたくさんありました。

 現在、機械化やOA 化といった言葉は死語となりました。今や、機械化やOA化、IT化は「当たり前」のこととして広く浸透し、ATMや複合機、パソコンのない状況は考えられません。当たり前だから、ことさら取り上げる必要のない言葉になったのです。

引用:DX支援ガイダンス - デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ

この文章を読んで、前職でベテランの先輩方から『この料金計算は今ではシステムが自動計算してくれるけど、昔は毎回手計算していたから間違いも多くて大変だった』『大量の紙の申込書が届くから枚数確認や事務処理に会社で徹夜することもあった』というような内容を昔話として教えてもらったことを思い出しました。

当時の先輩方も、機械化やOA化の移行時には不安を感じていたかもしれませんが、自社や自身の業務に浸透し「当たり前」になったことで、『今は便利で良い、昔は大変だった』という笑い話に変わったのだと感じます。

機械化やOA化の例と同様に、DXが「当たり前」のこととして社会全体に浸透し、後から振り返って『今は便利で良い、昔は大変だった』という笑い話にされている未来が、もしかしたら遠からず訪れるのかもしれませんね

 

繰り返しになりますが、DX推進はとにかく始めてみること、デジタルに慣れて「当たり前」にすることが、その先へ歩みを進めていくためにとても重要です。また、デジタル化と言っても何から手を付けるべきかも分からないという場合は、地域の支援機関へ相談してみるなど社外の力も利用して第一歩を踏み出すことが大切です。

以上、経済産業省の現状認識から中小企業におけるDXの現状についてまとめてみました。最後までお読みいただきありがとうございました!