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【DX推進】ローカルAI・LLMとエッジAIの基礎知識について

作成者: rice|2025年11月26日

こんにちは、riceです。

生成AIの活用が広がる一方で、「社内データが外に出てしまうのでは?」といった不安から、セキュリティへの関心もこれまで以上に高まっています。
そんな中で、「ローカルAI」「ローカルLLM」「エッジAI」というワードを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

「ローカル環境でAIを利用できること?なんとなく安全そうだけど...」と漠然としたイメージしか抱けていないので、こちらの3つについて基礎的な部分を理解しようと調べてみました。


ローカルAI

インターネット上のクラウドサーバーではなく、自身のパソコンや社内に設置したサーバー(オンプレミス環境)など、手元にあるデバイス(ローカル環境)で直接AIモデルを動かす技術を指します。
私たちが普段利用しているAIの多くは、データを一度クラウドへ送ってから処理をしていますが、ローカルAIは、AIの推論(新しいデータに対して予測や判断を行うプロセス)やデータ処理をデータが発生したその場で実行します。


ローカルLLM

前述のローカルAIと同様に、手元のデバイスやオンプレミス環境で動作し、文章に特化したAI(大規模言語モデル:LLM)を動かす仕組みを指します。ChatGPTのように、文章作成や要約・質問への回答を行うAIを、自社の環境で安全に利用できることが特徴です。


ローカルAIとローカルLLMは、どちらもローカルやオンプレミス環境でAIを実行するという共通点を持っています。ローカルAIはその環境の中で動作する、画像認識や音声認識などの幅広い種類のAIを指し、ローカルLLMは、ローカルAIの中でも「自然言語処理に特化した大規模言語モデル(LLM)」ということになります。


ローカルAI/LLMのメリット・デメリット

ローカルAI/LLMの主なメリット・デメリットは以下です。


<メリット>

高いセキュリティ
データの処理がインターネット上の外部サーバーでなはく、企業の社内システムや手元のデバイス内で行われることにより、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。
社内文書や顧客情報などの機密性の高いデータを扱う場合や、金融・医療などの高いセキュリティ基準が求められる分野で特に有用です。


オフラインでの利用
ネットワークの接続状態に依存せず、オフライン環境や通信が不安定な環境でも稼働できます。

<デメリット>

高い初期コスト
モデルの推論やトレーニングを効率的に行うために高性能なGPUや専用ハードウェアが不可欠で、大きな初期投資が必要となるケースが一般的です。
(GPU:GPUは、PCの画面表示だけでなくAIの計算にも使われる「画像をきれいに、かつ高速で描画するための専門的な計算装置」)


性能と精度の制限
ローカル環境で動かすAIモデルは、使っているパソコンやサーバーの性能に合わせてサイズ(パラメータ数)が制限されます。そのため、クラウドで動く大型モデル(GPT-4など)と比べると、回答の精度や複雑な作業をこなす力が弱くなる傾向にあります。



次はエッジAIについて見ていきましょう。

エッジAI

AIの推論処理を、自動車やIoT機器などのデータが発生する場所の近く(エッジ)で実行する技術です。クラウドを経由しない、または最小限に抑えるため通信遅延がなく、高速に応答できることが特徴です。

ここで素朴な疑問...なぜクラウドを経由しないと通信遅延が抑えられるのでしょう?
 →インターネットの混雑具合やサーバー側の処理で待ち時間が発生する、といったリスクが発生しないため。です。


<メリット>

リアルタイム処理
データをクラウドへ送信しないため、処理速度が格段に速くなります。自動運転車の障害物検知など、現場でリアルタイムな判断が必要な用途に適しています。

オフライン動作
インターネットに接続がない、または不安定な環境でも自律的に処理を継続できます。

データセキュリティの向上
ネットワークを経由せず、データが発生した付近で処理が実行されるため、情報漏洩のリスクが低減します。個人情報や機密データを扱う医療や金融分野で特に役立ちます。


<デメリット>

処理能力の制限
エッジデバイスは、クラウドのサーバーに比べてGPUや計算能力が劣っている傾向にあるため、高度で複雑なAIモデルを実行するのは困難とされています。実行するAIモデルは軽量化される必要があり、特定のタスク(画像認識・行動検知など)に特化させることが多いようです。


運用やメンテナンスの難しさ
多数のエッジデバイスそれぞれに運用、監視、メンテナンスなどの運用負荷が生じ、加えて管理にかかる人件費といったコストも膨らむ可能性があります。



ビジネスでの活用例

ここまで特徴やメリット・デメリットを整理してきました。実際にこれらの技術がビジネスの現場でどのように使われているのか、具体的な例を見てみましょう。


【ローカルAI/LLM】金融・医療分野での機密データ分析:
顧客の財務データや患者の医療記録などの機密情報を社内サーバーや端末内で分析。データ漏洩リスクを最小限に抑え、不正取引の検知や診断支援を行います。

【ローカルLLM】社内向けチャットボット
企業の内部文書・マニュアル・契約書などを学習させたLLMを、自社のオンプレミス環境で運用することで、情報漏洩を防ぎながら業務効率を向上させます。

【エッジAI】製造ラインでのリアルタイム品質検査
製造ラインに設置されたカメラ映像を、現場のエッジデバイスで即座に解析し、不良品をリアルタイムで検出。不良品をラインの外へ出すことで、検査の自動化と効率化に繋がります。

 

 

おわりに

ローカルAIの導入は、セキュリティ面を担保しつつ、生成AIを活用して業務効率化を目指したい企業にとって重要な選択肢となりそうです。それぞれを理解することで、どの場面でどの技術が使えるのかを判断しやすくなりますね。

またこちらの調査を進めるにあたって、クラウドAIとローカルAIのメリットを活かした「ハイブリットAI」にも興味が湧いたので、今後調査してご紹介できればと思います!