こんにちは、riceです。
前回のブログでは、ローカルAI/LLMとエッジAIについて、それぞれの意味やメリット・デメリットを中心にご紹介しました。
調査を進める中で気になった「ハイブリットAI」。ハイブリットAIにはいくつかの捉え方がありますが、こちらの記事では「クラウドAIとローカルAI(エッジAI)」に注目してご紹介したいと思います。
ハイブリットAIとは、インターネット経由で利用するクラウドAIと、社内サーバーやパソコンなど手元の環境で動かすローカルAIを組み合わせて使う仕組みです。
それぞれの強みを活かし、弱みを補い合うことで、実用性・安全性・コストのバランスを取りやすくなるのが特徴です。
ハイブリットAIの利点は、クラウドAIとローカルAIの役割を分けることで、業務や組織の実情に合わせてAIを活用できる点にあります。
また多くの企業では、「すべてのデータを外部に出すのは不安だが、便利なAIも活用したい」「処理の速さや安定性は現場で確保しつつ、高度な分析も行いたい」といった要件を同時に求められるケースも少なくありません。
ハイブリットAIはこうした状況に対して、クラウドかローカルかどちらかを選ぶのではなく、それぞれの強みを活かし、役割を使い分けるというアプローチを取ります。
クラウドAIは、高い計算能力と最新モデルを活用できる点が大きな強みです。ローカル側で整理した情報をクラウドAIに渡すことで、「大量データの分析」や「レポート・資料の生成」といった作業を効率化できます。
ローカルAIは、データを社外に出さずに処理できるため、安全性や即時性が求められる業務に向いていることが特徴です。
個人情報や社内情報を含むデータ処理、ネットワーク環境に左右されない業務などをローカルAIが担うことで、「情報漏洩リスクの低減」や「安定した応答」を実現できます。
このように、安全性や即時性が求められる処理はローカルAI、高度な分析が必要な処理はクラウドAI と役割を分担することで、セキュリティや利便性を両立できます。
クラウドAIとローカルAIにはそれぞれ弱点があります。
どちらも優れた技術ですが、単体で使おうとすると運用上の課題が出てくる場合があり、それらを補い合うという形で組み合わせるのがハイブリットAIの考え方です。
クラウドAIは利便性や性能に優れる一方で、次のような懸念があります。
こうした点は、「機密性の高い処理などはローカルAIに任せる」「クラウドに送るデータを必要最小限に整理する」 といった役割分担によって補うことができます。
ローカルAIにも次のようなデメリットがあります。
これらの点は、「高度な分析や処理の重い生成などをクラウドAIに任せる」「ローカルAIは判断・前処理(データを整理、選別する役割)を行う」など、役割を絞って使うことでカバーできます。
ハイブリットAIの活用場面と、可能性について見ていきます。
患者さんの心拍数や血圧などを、ウェアラブルデバイス(エッジデバイス)のAIがその場で分析し、病状の悪化等をリアルタイムで検知。
機密性の高い患者さんのデータはローカル環境内で処理し、集めたデータを匿名化してクラウド上で傾向分析などに活用しています。
これにより、入院の再発を減らしたり、臨床医の診断を支援したりといった効果も生んでいます。
AWSでは、データが発生する現場(エッジ)でリアルタイムに分析・判断を行う考え方を紹介しています。
全てをクラウドに送るのではなく、エッジ側で推論やデータ処理を行うことで遅延を抑え、通信量やコストを削減できます。こうした仕組みを活用し、クラウドとエッジを連携させることで、製造業の異常検知など、スピードが求められる業務に役立つと説明されています。
おわりに
ハイブリットAIは、クラウドとローカルのどちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの強みを活かしながら、業務や現場に合った形で使い分けるという考え方でした。セキュリティやコスト、運用負荷といった課題がある中で、企業にとって持続可能なAI活用を支える選択肢の一つと言えそうです。